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肺炎は高齢者の死因の第3位になっています。
ここでは肺炎の情報を載せていきます。
65歳以上の高齢者は現在全人口の20%程度ですが,医療の進歩もあり今後ますますその比率は高まるものと考えられます.
高齢者の約8割は,何らかの脳血管障害をもっているといわれます.
脳血管障害をもっていると,嚥下反射が低下し,誤嚥性肺炎をおこしやすいため,総じて高齢者は肺炎になりやすいということができます.
高齢者性肺炎は,若年者の肺炎とは違う特徴があります.
その1/3は発熱もなく無症候性で,普段よりも不活発,食欲不振,なんとなくボーとしている,失禁するといった,一見肺炎とは関係ない不定型な症状で始まるため,診断が遅れがちです.
次に,高齢者は若いときより免疫能が落ちていると考えられ,若い時ならば自力で治ったであろう弱毒菌や常在菌による日和見感染が問題になります.
このような菌はペニシリンや第1世代のセフェム系といわれる抗生物質では効かないことが多く,第2世代,第3世代のセフェム系を使うことが多いのですが,その使いすぎで最近はMRSAなどの耐性菌の増加が問題になっています.
たんの細菌検査をして,目的の菌を特定してから治療を始めるのが一番いいのですが,結果が出るのに2,3日かかるため,最初は最も適当と考えられる抗生剤で開始し,検査結果を待って薬が合っているかを確認します.
肺炎は細菌だけが原因ではありません.
インフルエンザをふくむウイルス,真菌(カビ),結核菌,マイコプラズマ,クラミジア,寄生虫といった病原微生物は,通常の抗生物質が効きません.
胸部X線だけでどの病原体か特定するのは困難ですが,頻度的には細菌性肺炎が最も多いです.
その他の原因の場合でも二次的に細菌性肺炎を合併することも多いので,たんの検査を出した後で,とりあえず細菌用の抗生物質を最初に使うのが普通です.
それでも良くならないときは,その抗生物質が効かない細菌か,上述の細菌以外の原因を考えることになります.
前述したように高齢者は脳血管障害をもつことが多く,一旦肺炎が治ってもしばらくしてまた肺炎を起こす(おそらくは誤嚥による)ことも特徴です.
そのうちに抗生物質の効かない耐性菌,特に緑膿菌やMRSAが定着してしまって何回目かの肺炎が致命的なものになってしまいます.
では,高齢者の肺炎の治療はどうすればいいのでしょうか?
一番いいのは肺炎にならないこと,つまり予防です.
日頃からご飯はしっかりと時間をかけて誤嚥の予防に努めること,口腔内は歯磨き,うがいなどで常に清潔にしておくことが重要です.
周りの人は,発熱,咳など,肺炎の症状がなくても,ボーとしている,食欲がないといったいつもと違う症状を見逃さないことが大事です.
このような症状が続けば,早めに医療機関を受診し,適切な治療を受けることが必要です.
別の医療機関を受診して,のちに当院を受診する方もおられますが,もらったクスリの名前や,受けた点滴の内容を尋ねても「わからない」場合が結構あります.
前医での治療内容からある程度,次に投与すべきクスリがわかります.
もらって飲んでいるクスリがどんなものか,把握しておいていただくとこちらも助かります.
また,持病(特に脳血管障害,糖尿病など)や,今までかかった病気を教えてもらえると治療の参考になります.
最後にインフルエンザについて少し述べます.
秋から春の季節,インフルエンザに注意する必要があります.
そのわけは,症状(高熱,全身消耗,関節痛などの全身症状)が強く,伝染力も強いからです.
一般的に基礎体力が弱っていると考えられる高齢者のインフルエンザによる死亡率が高いのは新聞報道などでよくご存じのことと思います.
インフルエンザで抵抗力が弱ったところに,通常の細菌性肺炎を合併することもよくありますので注意が必要です.
予防という意味では,インフルエンザワクチンがあります.
最近のワクチンはインフルエンザの変異をかなり正確に予測して作られているので,結構効果があります.
高齢の方,肺気腫など呼吸器の基礎疾患をもっている方は接種しておいた方がよいでしょう.
万一,インフルエンザにかかっても,軽くてすむといわれています.
主治医の先生に相談されてはどうでしょうか?
例年,大体11月頃になれば予防接種が可能です.
肺炎に限らず, あらゆる病気においていえることは, 「早く見つかれば早く治る」ということです.
重症になってから救急車でかつぎ込まれると入院期間も相当長くなりますし,場合によっては命にかかわるということもあります.
日頃からの自分の健康意識を高めておくことが大切です.
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