メルマガ1:結核の疫学


ここでは、私がメルマガで配信した文章を紹介します。

結核は、戦前は日本人の死亡原因第一位でした。

その後、有効な薬剤の開発などで患者数は減少しましたが、

最近、若年者や高齢者で増加傾向にあります。

「結核は過去の病気ではない」

このことを各人が意識して、結核を減らしましょう。

【第1回】結核の疫学

公益財団法人結核予防会疫学情報センターのホームページに詳細なデータがあります。

http://www.jata.or.jp/rit/ekigaku/toukei/nenpou/

2016年版のポイントは以下のようになっています。

(1)平成28年の新登録結核患者数は17,625人で、結核罹患率(人口10万人対の新登録結核患者数)は13.9であった。

罹患率の減少傾向は続いているが、前年の罹患率と比べての減少率は3.6%で、平成27年の減少率6.5%と比べると大きく減少した。

(2)欧米諸国の多くは結核低蔓延の水準である罹患率10を下回っているが、日本の罹患率13.9はまだその水準に至っていない。一方、日本の近隣アジア諸国における結核罹患率は、日本の結核罹患率と比較してかなり高い状況である。

(3)全体では減少傾向がみられる新登録結核患者数であるが、年齢階級でみると患者数の増加がみられるところがあった。

1. 90歳以上の高齢者層: 日本の結核患者の多くを占める高齢者結核のなかで90歳以上は患者数が増加している。

2. 15歳から29歳の若者層: 外国出生患者数増加の大きな影響がみられる。

(4)外国出生の新登録結核患者数は年々増加をみてきたが、平成28年は前年から174人の大きな増加となり、新登録結核患者数の7.6%となった。特に20歳代では前年の565人から712人と大きな増加となり、外国出生患者が占める割合も57.7%に達した。

(5)新登録結核患者の高齢化はさらに進み、60歳以上の患者割合は71.6%、80歳以上は39.7%に達した。

(6)都道府県別にみると、北海道、東北、甲信越を中心に10の県が結核低蔓延の水準である罹患率10を下回った。

一方で高罹患率上位は大都市を含む都府県が占め、結核患者の大都市への偏在化がみられた。

(7)新登録肺結核患者のうち多剤耐性結核患者(イソニアジド、リファンピシン両剤に耐性)は49人で前年の48人からほぼ横ばいであった。肺結核培養陽性患者の多剤耐性結核患者割合は0.5%であった。

(8)新登録肺結核患者のうち、症状が出てから医療機関に受診するまでの期間が2か月以上かかり受診が遅れた者は19.7%であった。特に働き盛りの30~59歳で感染性が高い塗抹陽性患者に限定すると33.3%で、3人に1人に受診の遅れがみられた。

(9)潜在性結核感染症(LTBI) の新登録患者数は7,477人で前年より802人増加した。特に40歳以上で増加がみられ、60歳代では前年から241人増加した。(http://www.jata.or.jp/rit/ekigaku/index.php/download_file/-/view/4111/

 

さらにまとめると以下のようになるかと思います。

A:日本の平成28年の結核罹患率(人口10万人対の新登録結核患者数)は13.9で、中蔓延国である。

B:全体では減少傾向であるが、90歳以上(再燃)と15-29歳(外国出生者)が増加している。

C:都道府県別では大都市に高罹患率が多かった。北海道、東北、甲信越は少なかった。

D:多剤耐性結核は0.5%であった。

E:働き盛りの年代で受診の遅れが認められた。

F:潜在性結核感染症(LTBI)は40歳以上で増加傾向が見られた。