特発性間質性肺炎(IIPs)は、原因不明の間質性肺炎の総称です。
ここでは、その中でも50%以上を占める主要な病型である特発性肺線維症(IPF)について解説していきます。
【IPFの診断】
IPFは慢性に線維化(肺が固くなる)が進行し、不可逆性の蜂巣肺(蜂の巣のように見える画像所見)をきたす、経過のよくないIIPsです。
診断には、間質性陰影をきたす塵肺、過敏性肺臓炎、膠原病、薬剤性肺障害など、原因のある間質性肺疾患を最初に除外する必要があります。
以前は外科的肺生検が確定診断に必要とされていましたが、最近ではIPFは臨床診断が認められ、臨床でも広く行われています。
上図は2004年のガイドラインによるフローチャートです。
IIPsが疑われたら、高解像度CT(HRCT)を撮影します。
肺底部(肺の一番足側の部分)の胸膜直下に蜂巣肺をみとめ、
①50歳以上、②緩徐な進行、③3か月以上の経過、④両側肺野の捻髪音、のうち3項目以上を満たすと、臨床的にIPFと診断できます。
典型的なIPFのCT所見でない場合、気管支鏡検査、外科的肺生検などを行い、IPFか(NSIP, COP, AIP, DIP, RB-ILD, LIPなどの)非IPFかを判断します。
特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂第3版 2016, p5より引用
特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂第3版 2016では、
IPFのHRCTの特徴を具体的に提示し、MDDを推奨しています。
IPFの特徴的所見はUIP(usual interstitial pneumonia)パターンです。
HRCTにおけるUIPパターンは下のとおりUIPパターン、possible UIPパターン、inconsistent with UIPパターンに分けます。
特発性間質性肺炎診断と治療の手引き 改訂第3版p49
IPFの臨床診断にはMDDによる診断が強調されています(上図参照)。
MDD(multidisciplinary discussion):呼吸器内科、画像診断医、病理診断医が総合的に判断する。
MDD-D:HRCTでUIPパターンの時。これは臨床と画像でIPFを診断しますので病理検査がない場合の適格性を検討します。
MDD-C:HRCTがUIPパターン以外の時で気管支鏡検査をしても診断に至らないもUIPに合致する場合。呼吸機能低下など、進行経過を総合して臨床的にIPFと判断することがあります。
MDD-B:HRCTでUIPパターン以外の時で外科的肺生検を行う場合。UIPの病理診断には外科的肺生検が最も診断しやすいため、患者のリスクを勘案の上、できるだけ施行が望ましいとされます。
MDD-A:HRCTでUIPパターン以外の時、画像で他疾患が考えられる場合、気管支鏡検査や外科的肺生検で他疾患が見込まれる場合。
特発性間質性肺炎診断と治療の手引き 改訂第3版p5
【IPFの治療】
以前はステロイドや免疫抑制薬やNアセチルシステイン(NAC)吸入療法が行われていました。
特発性肺線維症の治療ガイドライン2017では、
ステロイド、免疫抑制薬は「行わないことを」強く推奨するとしています。NAC吸入療法については少数例で有効な可能性があるとしています。
低酸素血症を伴うIPF患者には酸素療法を行うことが推奨されています。
慢性安定期のIPF患者には呼吸リハビリテーションを行うことが推奨されています。
【IPFのまとめ】