気胸 pneumothorax


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肺は肺胞(酸素を取り入れ二酸化炭素を排出する小さな風船のようなもの)が無数に集まってできています.

特に肺の上の方(肺尖部)には,一部抵抗の弱い部分,風船が膨らみきったように膨張,突出した部分ができやすいのです.

これをブラ,ブレブといいます.

ブラ,ブレブが破裂すると肺から空気が漏れだし,肺と胸郭の間,すなわち胸腔内に空気がたまります

これを気胸といいます.

通常は背の高い,やせた若い男性に起こることが多く,その他には肺気腫など慢性の肺疾患をもった老人にも起こりやすいようです.

症状としては,突然の胸痛,息苦しさです

胸郭は大きさが一定のため,漏れた空気の量が多いとその空気は行き場を失って肺を圧迫します.

肺が縮んでしまうわけでこのため息苦しさが生じます.

肺の虚脱があまりひどいようだと,反対側の肺や心臓を圧迫して「緊張性気胸」という病態となります.

こうなると血圧や意識レベルが低下し,直ちに治療しなければ死亡することもある状態です.

気胸の治療

初発の場合はまず保存的治療を試みます.

破裂したブラが小さければ,自然に穴が閉じて肺が再膨張して治ることも十分期待できます.

即ち,経過観察のみで治癒することもあるわけです.

空気漏れがある程度以上多いときは経過観察での治癒は期待しにくく,処置を要します.

緊急処置として太い針を胸腔内に留置し,注射器で空気を抜く(脱気)やり方があります.

より確実には,トロッカーカテーテルを胸腔内に留置して,たまった空気を体外に排出する方法(胸腔内持続ドレナージ)があります.

カテーテルが留置されているとき,陰圧をかけることで肺を再膨張させ,穴が閉じるのを期待するわけです.

空気漏れ(エアリーク)が止まらないときは,自家血や薬剤を注入し,胸膜の癒着をはかります.

ここまでやってもエアリークが止まらないとき,あるいは気胸の再発を繰り返すときは外科的治療を試みます.

穴(ブラやブレブ)を周りの健常部分を含めて切除する方法です.

ひと昔前までは,開胸手術で傷跡も大きかったのですが,最近は胸腔鏡という内視鏡の一種を使って傷跡も小さくてすむ手術(VATS)が大勢を占めています.

患者さんにとっても侵襲が少なくてすみます.

 

気になる再発率の方ですが,内科的に治療した場合,初回気胸が起こってまた再発するのは約50%,2回起こすと再発率は80%以上といわれています.

外科的治療の方も残念ながら再発率0%ではありませんが数%以下であり,内科的治療と比べると格段に良い成績です.

 

以上は,自然気胸といわれる病気です.

他に,交通事故で肋骨骨折したときなどに起こる外傷性気胸があります.

胸腔内に出血し,血液が貯留している血胸を合併した「血気胸」であることが多いです.

治療は持続ドレナージで気胸が治り,出血が止まるのを待つのですが,出血が多いときは手術になることもあります.