メルマガ5・6:結核の検査


【第5回】結核の検査その1
結核は結核菌の検出をすることで確定診断となります。
なので、検査としては結核菌を検出するために
喀痰、胸水、胃液などの検体の抗酸菌(結核菌は抗酸菌です)検査が重要です。
最も多いのは肺結核ですから、喀痰の検査をまずは行います。
喀痰の検査は、まず塗抹検査(喀痰を直接スライドガラスに塗って抗酸菌染色する)を行います。
抗酸菌の染色はZiehl-Neelsen(チール・ネルゼン)染色を行います。
この結果は喀痰を提出した当日に結果がでます。
結核菌を認めないときはガフキー0号と表現します。
結核菌を認めた場合はガフキー1号(少ない)から10号(多い)と表現します

結核菌が少ない場合は、塗抹検査で検出できないこともあります。
そのような場合は、抗酸菌の培養検査を行います。
通常の細菌は2,3日で結果が出るのですが、結核菌は発育が遅いので、
2週間から最長8週間かかることもあります。
今まで、塗抹検査で陽性なら結核菌陽性と書いてきましたが、厳密には「抗酸菌」陽性です。
結核菌と確定するためには塗抹検査が陽性の検体を使って結核のDNAと一致するかを調べる必要があります
この目的でPCR(polymerase chain reaction)という方法が用いられます。
PCRは微小な検体のDNAを短時間で何百万倍にも増幅して検査する方法です。
PCRは1,2日で結果がわかりますから、培養結果を待っていられない場合に有用です。

なお、日常臨床で抗酸菌の塗抹検査で陽性となり、結核との鑑別が問題となるものに
非結核性抗酸菌症(NTM)があります。
PCRはNTMの中でも最も多いとされるMycobacterium avium complex(MAC)菌でも可能ですから、
抗酸菌が陽性の喀痰検体は、結核菌とMAC菌のPCR検査を行い、同定を行うのが一般的です。

 

【第6回】結核の検査その2

今回は、結核の検査その2です。
結核は発病すると結核菌を排菌するようになるので結核菌の検査をします。
では、発病はしていないが発病のおそれがある人はどうするのでしょうか。
発病していないので、結核菌の検査はできません。。。
このような場合、結核菌に感作されているかの検査をします。
昔は、「ツベルクリン反応」を使用しました。
[ツベルクリン反応]
ツベルクリン反応はPPD(結核菌の培養液を加熱滅菌後、菌が分泌した300 種類以上のタンパク質を部分精製したもの)を注射後48時間で注射局所の反応を見て判定を行います。
発赤と硬結が主な反応です。
結核予防法では判定の基準を,以前は次のように5段階に定めていました。
発赤長径が0~4mmを陰性(-),5~9mmを疑陽性(±),10mm以上を陽性とし,
陽性の中で発赤のみのものを弱陽性(+),硬結を伴うものを中等度陽性(++),
二重発赤や水疱,潰瘍,出血などを伴うものを強陽性(+++)としていました。
しかし,既感染率が著しく低下した今日では疑陽性が結核菌感染の結果による可能性が極めて低いので,
1995年4月改定されて疑陽性はなくなった。
すなわち,0~9mmを陰性,10mm以上を陽性と判定することになった。
BCG接種者では原則としてツベルクリン反応を行っても結核菌に感染したか否かは判定できない。
http://www.jata.or.jp/terminology/t_10.htmlより)
ここで問題となるのが、「過去に結核に感染した」だけでなく、他の要因でも陽性になることです。
特にBCG接種を幼少時に行っている人は、それだけでツベルクリン反応が陽性となり、最近の感染と区別できません。

このため、IGRAと言われる方法が主流になってきました。
[IGRA]
IGRAとは、Interferon-Gamma Release Assaysの略語であり、結核菌特異抗原により全血あるいは精製リンパ球を刺激後、産生されるインターフェロンγ(IFN-γ)を測定し、結核感染を診断する方法です。
現在、IGRAには2種類あり、一つは日本でも診断試薬として承認されているクォンティフェロンTBゴールド(QFT)であり、これは全血を検体とし産生 IFN-γの測定にはELISAを使用しています。
もう一つは、精製リンパ球を検体として用いる T-SPOT.TBであり、産生IFN-γの測定法はELISPOT法です。
使用する刺激抗原は結核菌群に特異的であるため、従来の感染診断法であるツベルクリン検査と比較し、
特異度は格段に高くなっています。
さらに、 IGRAはツベルクリン検査と異なり、医療機関への再診が不要であり、またブースター効果も無いという利点を持ちます。
一方、 IGRAは活動性結核と潜在性結核感染の区別は出来ず、また感染時期の特定も困難であるという制限を持ちます。
http://www.jata.or.jp/terminology/z_17.htmlより)
IGRAはBCG接種の影響を受けませんが、結核が活動性か潜在性かの区別はできません。
実際には、結核患者と接触した人の接触者健診で用いられることが多く、IGRA陽性であれば、
結核菌の排菌がなく画像が正常であっても、潜在性結核として治療(予防内服)を行うことが多いです。