結核患者には、「感染」、「発病」の2つを考える必要があります。
結核患者さんに接する家族や医療者は、結核患者さんが排菌した結核菌を吸い込む恐れがあります。
(特に未診断で咳をしている結核患者さんは感染させるリスクが高いです)
気管支に吸い込まれた結核菌は多くは咳によって外に排出され、感染しないのですが、時として結核菌が肺に定着することがあります。
すると結核菌を異物と認識して免疫系の細胞(マクロファージなど)が結核菌の回りに集まってきて貪食し封じ込めようとします。
この状態を結核に「感染している」といいます。この場合、結核菌は体の中にとどまり封じ込められていますから、人に移す心配はありません。
その経過中に免疫力が弱ったりすると、結核菌の力が相対的に強くなり、
増殖して体の外に咳によって結核菌をばらまく(排菌)ことがあります。
こうなると、結核を「発病」したことになり、人に移す恐れがあるので、
排菌が止まるまで結核専門病院に入院(隔離)する必要があります。
結核が「感染しているけど発症していない」状態を潜在性結核感染症( LTBI :Latent Tubercurosis Infection) といいます。
潜在性結核感染症は免疫力が強いと生涯発病せずに済むこともありますが、加齢とともに免疫力が弱くなると生涯で10%程度は「発病」に至ります。
あるいは免疫抑制薬、ステロイドなどの免疫を抑える薬の服用で結核が発病することがあります。
発病率を低くするために、イソニアジド(INH)という結核の薬を6-9か月ほど内服してもらうことがあります。以前は予防内服と言いましたが、最近では潜在性結核感染症の治療と言います。
INHの内服をすると、発病するリスクを1/3程度に下げることができます。
潜在性結核感染症の診断としては、
①排菌している結核患者と接触の機会があり、
②痰の検査をしても結核菌が検出されず、
③胸部X線でも結核を疑う陰影がない。 ということになります。
最近では、結核菌に感染しているかどうかをIGRA(Interferon-Gamma release assay)という血液検査で調べます。IGRAでは結核菌特異的な抗原とリンパ球を培養します。リンパ球が結核菌に感作されていると、リンパ球からインターフェロンγという物質が放出されるため、それを測定するわけです。
IGRAにはQFT-3BとT-SPOTという2つの測定方法があります。
以前はツベルクリン反応で調べていましたが、BCG接種の影響を受けたり、非結核性抗酸菌症でも陽性になるなどの問題があり、最近はIGRAがよく使われます。
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