喘息治療では、重症度が上がるにつれて吸入ステロイド(ICS)を増量し、だめなら長時間作用性β2刺激薬(LABA)とICSの合剤(ICS/LABA)に変更したり、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)やロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)などを追加したりします。
しかし、これらの治療をしてもコントロール不良な群に対しては、経口のステロイドを使用していました。しかし経口ステロイドはICSと異なり、ステロイドの副作用が問題となることが多いのです・・・。
近年、喘息が(少なくとも一部は)アレルギーが関与していることから、アレルギーに関係するIgEや好酸球をターゲットにした新しい薬剤が使用できるようになっています。
ヒト化抗IgEモノクローナル抗体製剤である ゾレア🄬、
ヒト化抗IL-5モノクローナル抗体製剤である ヌーカラ🄬
ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤である ファセンラ®が
現在使用可能です。
また、一部の施設に限られますが、気管支を内側から「温めて」その硬くなって拡張困難な病態を改善しようとする 気管支サーモプラスティも行われています。
ゾレア🄬はIgEと高親和性受容体(FcεRI)の結合を阻害することによりマスト細胞などの炎症細胞の活性化を抑制します(in vitro )。
https://drs-net.novartis.co.jp/dr/products/product/xolair/feature/
喘息では、IgE抗体のCε3がマスト細胞上にある高親和性受容体(FcεRⅠ)に結合し、そこに抗原が架橋結合して炎症性メディエーターが放出されます。 ゾレアは遊離IgE抗体のCε3に結合し、IgE抗体とFcεRⅠの結合を阻害します。
https://drs-net.novartis.co.jp/dr/products/product/xolair/behavior/
ゾレア@の製品情報はこちら。
ヌーカラは、重症喘息における好酸球性の炎症を抑え、喘息増悪の発現頻度を減少させる抗IL-5抗体薬です。
IL-5の機能を阻害することにより、血中好酸球数を減少しました。
ヌーカラ(メポリズマブ)は、好酸球表面に発現するIL-5受容体α鎖へのIL-5結合を阻止します。これにより、IL-5のシグナル伝達を阻害して、好酸球の増殖、分化、浸潤、活性化および生存を抑制し、気管支喘息患者において増加している喀痰中および血中好酸球数を減少させます。
https://www.healthgsk.jp/products-info/nucala/product-characteristics.html#anc001
ヌーカラの製品情報はこちら。
ファセンラもヌーカラと同様にIL-5をブロックすることで血液中の好酸球を減少させ、好酸球性難治性喘息に効果が期待される新薬です。
そもそも、Th2細胞からのIL-5が好酸球表面のIL-5受容体に結合することで好酸球が活性化し、喘息を悪化させます。
https://medicalcampus.jp/di/archives/1516
ファセンラは好酸球表面のIL-5受容体に結合することで、IL-5が好酸球に結合できなくします。
ヌーカラがIL-5を直接阻害するのに対して、ファセンラはIL-5受容体を阻害するという点が違います。
https://medicalcampus.jp/di/archives/1516
またファセンラがIL-5受容体と結合している好酸球はNK細胞が攻撃し、好酸球をほぼ0まで早期に除去するとされます。
これをADCC活性(Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity : 抗体依存性細胞傷害)といい、ファセンラに特徴的な作用です。
https://medicalcampus.jp/di/archives/1516
ファセンラは3回までは4週間間隔ですが、その後は8週間ごとの投与となっており、患者さんの負担は軽減されます。
https://medicalcampus.jp/di/archives/1516
左が重症喘息の気管支。気管支平滑筋が肥厚し、気道が狭くなっています。
右が気管支サーモプラスティ施行後の気管支。気管支平滑筋が薄くなり、気道が広がります。
http://www.btinfo.jp/about_bt/
気管支サーモプラスティ(BT)は、複数の薬剤を使用しても症状が出てしまう、18歳以上の喘息(ぜんそく)患者さんに対して、症状を緩和させる新しい喘息治療方法です。
BTは、麻酔下で内視鏡を使って行う、体への負担の少ない治療法です。気管支の中に入れた内視鏡の先端から電極付カテーテルを出し、気管支の内側を65度に温めます。
詳しい情報はこちらから。